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著書

輝く華の歯科衛生士 これからの歯科医院経営をチームで考える

医歯薬出版(共著)

価格:¥ 2,940 (税込)


ツボメールバックナンバー

■ 規模に応じたトップの振る舞いがあるのでは

 より知識集約型になりつつある現在企業では、指揮者が統率するオーケストラ
型のリーダーシップではなく、ジャズ型のリーダーシップが必要となってきた。
                 (御立 尚資著『経営思考の「補助線」』)
 
 
 皆さんは、毎朝、何時に出勤時間されていますか?

 通勤途中に内科医院があります。地域に根ざした評判のいい内科医院というこ
とは、その概観からも十分わかります。昔、その内科医院を関与している会計事
務所からも、頑張っておられる内科医院ということを、偶然聞いたことがありま
した。

 朝7時半にその前を通ると、白衣を着た男性が、医院前の患者用駐車場のチェ
ーンを降しています。別の日の同じ時刻に通ると、今度は、ホウキで朝降った雪
を履いています。別の日には、駐車場の隅にあるゴミを拾っています。白衣の男
性は、その内科医院の院長でした。

 以前、このツボメールで、毎朝5時半に店を開ける中古車屋の社長の話をした
ことがあります。その社長は、朝から車が動かないと困っている客が電話してく
るかも知れん、だから毎朝早く来るんじゃ、と言っておられました。

 朝といえば、先日、ある院長を訪ねて、診療開始始業時間の30分前に伺った
ことがあります。資料をいただくだけでしたので、患者さんがおられない時間を
狙って伺ったのですが、院長は不在。応対してくれた衛生士さんが

「いつも9時ぎりぎりなんです。そちらでお待ちいただけますか?」

(まあ、待つしかないか・・・)と思い、持参した本を読みながら、待合室で待
たせていただきました。すると、髪をボサボサにした(と私には見えましたが)
受付の子が、何やらポーチを持ってブラッシングコーナーに入っていきます。

 3分位経ったでしょうか。髪を後ろで留め、ポーチを持った女の子が、何もな
かったかのように受付に戻っていきます。(えっ!朝、ブラッシングこーナーで
化粧するんだ・・・)私は、言葉を失ってしまいました。

 その受付の子は、何もなかったように、今度はトイレの掃除を始めます。もう
始業時間10分前です。当然ながら、朝一の患者さんが来ます。新患だったらし
く、誰もいない受付で少し待っておられました。そうしているうちに、患者さん
に気づいた受付の子は、

「あっ、待っててください。」

とトイレ掃除をやめません。そうです。その受付の子からすれば、優先順位は、
患者さんよりトイレ掃除だったのです。一部始終を見させていただいた私は、
誰もが思うように

(お前が、化粧なんかしてるから、患者さんに迷惑かけただろう!)

 トイレ掃除が終わった受付の子は、またも何もなかったように、笑顔で丁寧
に患者さんに応対します。

「お電話された○○さんですね、お待ちしておりました。こちらの問診表にご
記入され、少々お待ちいただけますか?」

 人間には、おもての顔とうらの顔があるといいますが、両面を見せてもらっ
た気がしました。院長は、結局、9時丁度に診察室に入ってこられたようでし
たので、資料は9時5分にいただき、その場は黙って帰りました。その夜、院
長と電話で話す機会があり、この受付の子の振る舞いを言ったところ、

「わかる、わかる。そんなとこがある子なんだよね。」と院長の言葉。

 こんな態度を取る受付の子がいたとき、皆さんはどんな態度を取られますか
?次の日に呼んで注意する。個別に言うと角が立つので、朝礼で何気なく言う
。就業規則に書いてあるだろうと叱責する。その場にいてないので、その現場
を見るまで黙っている。いかがでしょうか。

 私が言ったのは、

「先生、朝、何時に来ていますか?先生が、医院にいることだけで、問題は解
決しますよ。」

 朝ゆっくり出勤することを、揶揄して“役員出勤”ということがあります。
社長と従業員1人の会社で、社長が役員出勤するとどうなるでしょうか。会社
は確実に倒れていくでしょう。では、5人ではどうでしょう。100人だった
ら・・・。規模が大きくなれば、補佐する人間がたくさんいますから、役員出
勤可能ですが、規模の小さい組織では、トップの存在の影響が大きいので無理
です。

 特に、今回の歯科医院のように、問題が起きかけている組織では、院長とい
うトップがそこにいるだけでも違ってきます。朝早く出勤するということです
。ただし、朝来ても、院長室に籠もっていては意味がありません。トップであ
り、リーダーとしての存在を見せる、スタッフに院長の背中を見せるというこ
とです。

 歯科医院という規模で、ふさわしいトップの振る舞いとは、スキを見せない
、俺も本気だ、という言動をスタッフに見せることです。それを繰り返してい
くと、いつかは役員出勤ができるときが来るかも知れません。もし、しなけれ
ば小さな問題は、やがて大きな問題へと広がっていきます。当然、音も匂いも
しないので、気づかないうちにそっと問題は大きくなるのです。

 トップは、組織の細部への気配り、心配り、そして行動がなければならない
のです。

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